ふなくし皮膚科クリニックは、2026年4月に医療法人化することになりました。
医療法人化というと、「規模を大きくするためですか」と聞かれることもあります。
ただ、私の中では少し違っていて、これからもこの地域で診療を続けていくために、必要な形を整えたいという思いからです。
開院してから12年が経ちました。
振り返るとあっという間でしたが、その中で地域の医療環境も少しずつ変わってきていると感じています。
最近、近隣のクリニックが閉院されたこともあり、「先生のところは予約が取りづらくなっていて困っている」という声を患者さんから聞くことも増えました。
三郷市周辺は、皮膚科・アレルギー科を専門とする医療機関が多い地域ではありません。
だからこそ、この地域で診療を続けていくことがとても大切だと感じるようになりました。
医療は、当たり前にそこにあるように見えて、実はそうではありません。
続けていく医療者がいることで、はじめて成り立つものだと思っています。
そしてもう一つ強く感じているのは、日々の診療は医師ひとりではなく、チームで支えられているということです。
開業から支えてくださるスタッフには感謝しかありません。
今回の医療法人化は、患者さんにとって、これまで以上に安心して通っていただける体制を整えるための第一歩です。
そしてスタッフにとっても、働きやすい環境を整えることが目標の一つになります。
患者さんのためにできること
ふなくし皮膚科クリニックでは、皮膚科・アレルギー科として、日々さまざまな患者さんと向き合っています。
皮膚の症状は、目に見える場所に現れることが多く、生活や気持ちに影響することも少なくありません。
「人前に出るのがつらい」
「ずっと気になってしまう」
そうしたお話を伺うこともあります。
だからこそ、症状だけを見るのではなく、その方の生活や背景も含めて診療したいと考えています。
また、悪くなってから治療するだけでなく、悪くならないようにすること、日常生活の中でできる工夫を一緒に考えることも大切にしています。
本来、病院はできるだけ来なくて済むことが一番よい場所だと思っています。
その上で、何かあったときに「ここに行けば大丈夫」と思い出していただける存在でありたい。
そういう立ち位置でいられることが理想だと考えています。
最近は、オンライン診療やネット予約など、効率的な仕組みも増えてきました。
それらは必要なものだと思っていますし、実際にネット予約やオンライン診療は早くから取り入れてきました。
ただ一方で、「効率がよければそれでよい」わけではありません。
待ち時間の中でスタッフと交わす何気ない会話や、診察前後のやり取り。
そうした時間が、患者さんにとって安心につながることもあります。
少し例えが違うかもしれませんが、魚屋さんで魚を買うときのような感覚に近いのではないかと思います。「今日はこれがいいですよ」「今はこれが美味しいですよ」といった会話をしながら買い物をする、そんなやり取りです。
ただ物を受け取るだけでなく、その間に会話があり、その中に価値が生まれる。クリニックにも、そうした雰囲気は残していきたいと考えています。
スタッフへの感謝と、これからの役割
今回の医療法人化にあたって、特にお伝えしたいのはスタッフへの感謝です。
当院には、長く一緒に働いてくれているスタッフがいます。
また、新しく加わったスタッフも年単位でクリニックを支えてくれています。
日々の診療は、診察室の中だけで完結するものではありません。
受付での対応、患者さんへの声かけ、ちょっとした気配り、院内の雰囲気づくり。
そうした一つひとつの積み重ねによって、クリニックとしての診療が成り立っています。
私一人ではできないことを、スタッフが支えてくれている。
それを日々実感しています。
私はスタッフのことを「ファミリーに近い存在」と感じています。
もちろん本当の家族ではありませんが、人生の中で長い時間をともに過ごす大切な仲間です。
だからこそ、その時間が「ここで働いてよかった」と思えるものであってほしいと考えています。
これまで一緒に働いてくれていることへの感謝と、これからもこのクリニックをともに支えていってほしいという思い。
その両方を、今回改めて強く感じています。
これからは、クリニックを単なる「働く場所」としてではなく、
「ここで働いてよかった」と思ってもらえる場所にしていくことも、私の役割だと考えています。
制度や環境の面についても、きちんと整えていきたいと思っています。
安心して長く働ける場所にしていくこと。
医療法人化は、そのための一歩でもあります。
町医者としての診療
私は、町医者として診療を続けてきました。
大学病院では、一人の患者さんを長い年月にわたって診ることはあまりありません。
しかしこのクリニックでは、赤ちゃんの頃から通ってくださっている患者さんが成長していく姿を見ることができます。
ご家族で通ってくださる中で、その方の生活や背景が自然と見えてくることもあります。
そうした関わり方ができるのは、町医者ならではの役割だと感じています。
皮膚科・アレルギー科の診療は、命に直結するものではないかもしれません。
ただ、症状が目に見える場所に現れることが多い分、患者さんの生活や気持ちに大きく影響します。
だからこそ、診療では「その人を丸ごと見る」ことを大切にしています。
皮膚の症状そのものだけでなく、その方がどんな生活をしていて、何に困っていて、何を不安に感じているのか。
そこまで見ないと、本当に必要な診療にはならないと思っています。
また、子どもの頃から見ている患者さんが成長していく姿を見ることができるのも、町医者の大きなやりがいです。
赤ちゃんだった子が小学生になり、中学生になり、大人になっていく。
そういう時間の流れを共有できることは、私にとってとても大切なことです。
大きな病院ではなく、地域の中にあるクリニックだからこそ果たせる役割がある。
私はそれを、これからも大切にしていきたいと思っています。
医療法人化という新しい一歩
今回の医療法人化は、何かを大きく変えるためのものではありません。
これまで大切にしてきたことを、これからも続けていくための土台を整えるためのものです。
これからの医療は、働き方も変わっていくと感じています。
若い医師の中には、ワークライフバランスを大切にしたいと考える方も増えています。
また、子育てや家庭と両立しながら働きたいという方も多くいらっしゃいます。
そうした中で、一人の医師がすべてを抱えるのではなく、
複数の医師やスタッフで支え合いながら診療を続けていく体制が必要だと感じています。
分院や複数医師体制についても、その延長線上にある考えです。
無理なく続けられる形をつくることが、結果として患者さんにとっても安心につながる。
そのように考えています。
医療法人の名前は「みなと」としました。
港は、船が大海原から戻ってくる場所です。
安心して戻れる場所であり、湊は人が集まる場所でもあります。
そして「皆と」という意味も込めています。
患者さんにとっても、スタッフにとっても、安心して集まることができる場所でありたい。
そして、頼れる先生がいるところでありたいと考えています。
その中で、患者さんがより通いやすくなり、スタッフが安心して働き続けられる、
そんな場をこれからも皆と一緒につくっていきたいと思っています。
これからに向けて
これからの10年を考えたとき、クリニックは地域の中で、いわばインフラのような存在でありたいと思っています。
特別な場所ではなく、困ったときに自然と思い出してもらえる場所。
スタッフが笑顔で働き、責任感と誇りを持って診療に関わる場所。
そして患者さんが、「ここに来てよかった」と思える場所。
その一つひとつを、これからも丁寧に積み重ねていきたいと思います。
医療は特別なものではなく、日常の中にあるものだと思っています。
だからこそ、これからもこの地域で、当たり前に診療を続けていきたいと思います。
医療法人 みなと ふなくし皮膚科クリニック
院長 舟串 直子
